Hira2’s.diary

そらはいつだって淡々としている――。

天然果実。

2017/04/02 0:00

九州別府には、「地獄めぐり」という観光名所がある。

血の池地獄、かまど地獄、海地獄、白池地獄、龍巻地獄、あり地獄、借金地獄、法律事務所アディーレ。
今はとくに春休みと重なって、観光客でごった返しているが、天然のつく『坊主地獄』というところだけは、ガラガラである。観光バスはおろか、駐車場には一台も車が停まっておらず、不思議と誰もいない。
しかも、お土産といった売店らしい売店もないから、異様な雰囲気を醸し出している。
興味本位で窓口のおばちゃんに事情を訊いてみた。

そこは、他の地獄と独立しているから、「めぐり」のツアーに組み込まれていないらしく、入場料もその都度支払う必要があり、それを知った観光客のほとんどが別を地獄にそそくさと流れるという。
確かに、ツアーを一度体験して思うのだが、17時までに離れた主要七か所の地獄を次々にこなす必要があり、観ることよりも回りきることを優先して、変なシステムだなとは、前々から思っていた。国の名勝指定がなされたこともあって、人気を博す一方、この坊主地獄は、ツアー加盟に固辞している姿勢である。

坊主地獄のウリは、なんといっても、湧き出る灰泥が沸騰する様子だろう。
映画『千と千尋の神隠し』の川の神を彷彿して、確かに見所ではあるが、実はそれよりも、もっと感慨深い跡が残っているのだ。

その跡は、やや深く沈んだ窪みで、そこの前で立ち止まると、吸い込まれるような感覚に襲われるのだ。最近、吸い込まれてばっかりだが、以前、ブログに「クソ坊主」と表現したことで、自責に念を駆られたかもしれない。とにかく、そこは深く寂しい場所だった。

これについて宣伝不足なのではないかと思ったくらいで、主観ではあるが、さっきの主要七か所が束になっても、この坊主地獄には敵わないじゃないか、と自分では思っている。横綱と小結くらいに違うと感じた。
他が外国人観光客でごった返しているのに対し、そこは歴史の断片をひっそりと感じることができるから、ある意味の穴場で一日中いてもいいくらいだ。

それはまるで、天才ほど陰に潜んでいることを示唆しているようだった。
自分がメリットと思っているところは、実は他人からすると、さほどメリットでもなく、シャンプーでもないときがあって、本当のメリットとされるのは、窪んだ跡のように、静かで、深く、淡々とした場所に潜んでいる。それが本物の天然の部分だろう。

そもそもが、この世は嫉妬めぐりの中を生きているといっていい。
あれだけ人気の俳優女優だと博されていた人が、今では大嫌いランキングに一転する恐ろしいご時世だ。天国と地獄、どちらも可もなく不可でもない。目立たず、ひっそりとしているほうが一番幸せなのかもしれない。

 

P.S.
そして、周囲は地獄耳地獄。

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