Hira2’s.diary

そらはいつだって淡々としている――。

甘いレモン。

2017/03/30 0:00

唐揚げには、レモンが添えられている。
緑のパセリと、くし型の黄色が目の味覚をほどよく調和させる。

自分はレモンをかけない派だが、一応、備えられているときは、たまに絞ってみたりする。すると、ふと昔の記憶が蘇ってくるのだ。

サラリーマンの新人時代に、同じテーブルにいる班の先輩から、唐揚げにレモンをかけてと言われ絞ってみれば、「ウッ!」と言って片目を手で押さえる上司がいた。でも演技である。

最初は、レモン汁が目に入ったかと思い、「あっ、すみません」なんて、自分ひとりだけがそれにひっかかり、周囲は笑いの渦だった。その上司が決まってこれをやることを課内で周知されていたのだ。

別の日、似たようなシチュエーションで、新人がレモンを絞った際に、「うっ!」と自分もやってみたところ、その場の空気が一瞬で凍り付いたのが分かった。先の上司が、引き攣り笑いを浮かべながら、遠い目をしていたのだ。それ以来、その上司と目が合うことはなかった。
今でも唐揚げのレモンを見るたび、そのときの苦い過去を思い出すのだ。

会社組織においては、多くの「暗黙の了解」が存在する。
業務上はもちろん、大宴会や忘年会、餅つき大会など、家族も参加できる無礼講の席では、上司の奥さまよりも美人妻をもつ妻帯者は気を付けなければいけない。新人は、これをやらかすのだ。新婚だと、張り切って愛妻を連れてきたくなるが、そこはグッと堪えて一人で行くか、奥さまを男装させるかだ。

草野球行事でいえば、上司がたとえド素人でも四番バッターだった。
塁に出て、いくらトンチンカンにリードが大きくても刺してはいけない。
上司が盗塁して、アウトのタイミングだったら、ショートの部下は、捕球を誤るか、気を失うかだ。

ゴルフでは、上司がOB方向を打っても、「ファー!」なんて叫んではいけない。「フックで戻ってこい!」と檄を飛ばさなくてはいけないのだ。間違えて、「ファ、ファ、ファックカモン!」と叫んだこともある。そして、次番の部下は、もっととんでもない方向に打たなくてはいけない。ティーマーカーに打球を当てて真後ろに飛ばす豪傑もいたくらいだ。ちなみに、その部下は、中堅の支店長に栄転した。

このように多くの不文律が存在したのだ。
それはレモンの汁のように、もの凄く酸っぱいし、いつどこに飛び火するか分からない。
その点、法律とか正しさや平等を説くほうが至って簡単だ。でもそれはどこか甘いフリをした酸っぱい葡萄のような話である。

実際にかじったことがある人だけに見えてくる、感情や格差の大切な風景があるのだ。けしてゴマ擦りとか、卑屈の態度ではない。無言の寄進である。
これは独立後に必ず活きるといっていい。

そういう意味では、ギトギト油で揚げた唐揚げ料理に、レモンは和らげる効果として寄与しているのだろう。
とくに、組織内の揚げ足には。

 

P.S.
上司の発言には、すべて首肯(しゅこう)。じゃないと、子会社に出向。

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