Hira2’s.diary

そらはいつだって淡々としている――。

振り向けば、豆でっぽう。

2017/03/17 0:00

ふと台所に目をやると、節分用の豆が未開封のまま残っていた。
鬼がこっちを睨んでいるのだ。どおりで長きに亘って視線を感じていたものだ。

どこで買ったのか思い出してみると、そういえばコンビニだった。
あの時、レジの会計中、後ろを振り向いたときコイツがいたのだ。

その店内はいつも、季節の商品がうまい具合に陳列してある。
会計を待っている間、つい手に取ってしまい、絶妙なタイミングでバイト君と目が合うから、買わざるを得ないのだ。
きっと、就業マニュアルに、「季節の商品を手に取ったお客さまとは、さりげなく目を合わせ、犬がク~ンと泣くときの目をしなさい。」と書かれているはずだ。

そうした黙示で買わされたものは、今まで数知れない。
振り向けば、クリスマスの長靴。振り向けば、鏡餅。
振り向けば、バレンタイン監督。振り向けば、織田裕二。

情動買いしたものは、家でぞんざいに扱われる運命にある。
それはそうである。元々欲しかったものではないのだ。
そう反省しながら、部屋の窓際でボリボリとその節分豆を食べていた。

すると、「ドーン!」と窓ガラスを叩く強い音がしたのだ。
また電柱が倒れたのか、隣のOLさんがベランダから苦情を言いに来たかのどちらかだ。
ハッと振り返ると、ハトが痛そうに逃げ飛んでいるではないか。不思議な出来事だった。いつもは当てられてばかりだから、たまには部屋でゆっくり豆でも食べようと思ったのだろうか。もし窓ガラスが割れていたら、近くの公園で待ち伏せして懲らしめてやるところだ。
それにしても、そのハトが一目散に逃げる後ろ姿がどこか愛らしくもあったのだ。

とりあえず、ぶつかって痛いだけで済んでよかったよ。
人間界は、ぶつかっても痛くない無数の透明な窓に取り囲まれているようなものだ。
つい商品に惹かれて買ってしまうのも、歩きながらスマホを扱うのも、焼鳥の匂いにつられて居酒屋に流れていくのも、快楽の赴くままにその他大勢が歩いた動線があるからだ。

鳥が羨ましいよ。
普段は、何ら障害物のない空を前人未踏に羽ばたいている。
誰に教えられるわけでもなく、V字型に群れを成す姿に感銘を受けてしまうではないか。そして、絶対に後ろを振り返らない。
人間だって、まっすぐ前だけを向いて生きていく気宇な本能をもっているはずである。是非、そんな生き方をしてみたいものだ。

豆の入った箱の裏を見ると、賞味期限が10月で切れていた。
去年の節分のときに買ったものだ。
しかも、ほぼ食べてしまった後である。いや、もう過去も振り返らない。

 

P.S.
振り返ると、応援団もハッと立ち止まってしまう。

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