Hira2’s.diary

そらはいつだって淡々としている――。

希望の春。

2017/02/07 0:00

凍てつく寒さの夜が明け、地表にまぶしい朝陽が降り注ぐ。
霜がかった車のボディからは、湯気が立ち込め、まるで朝の光と絡み合って踊っているようだ。清々しい朝だ舞。

気が付けば、なぜか自分の頭からも湯気が立ち込めている。

近所でペンキ塗りの工事が始まったらしい。
足場を組む騒音が周辺に、カンカンとどろきわたり、うるさくて怒りと朝陽が絡み合っているのだ。無断の工事である。

これなら、雨が降ったほうがマシだと思い、
ポケットの忍ばせている浅田飴を一粒一粒、現場に投げ込みたいくらいだ。

 

工事に着手するなら、最低でも半径50m四方の世帯に、文書で一言断る必要がある。
公共工事は、近隣対策費という名目で、役所からお金を引っ張って、ご近所さまに一件一件丁寧に挨拶し、ついでに一日一日丁寧に工期も引っ張っていくではないか。

「こうじ」という名前の人がいたら、特に公示にうるさいだろう。

なにより挨拶に行くことで、自分の宣伝になる。
話し込んで、家人とうまく溶け込んだら、ついでに部屋の電球を代えてあげてもいい。
次第に展開が膨らんで、庭の剪定まで頼まれる。

すると、これが意外に楽しい。
「もしかして自分には、ペンキ塗りよりも、自然の木に接する仕事が向いているのではないか。」と気付く。

現場に戻り、親方に「すみません。本日付で、辞めさせていただきます。」と辞意を突き付ける。
「何?ちゃんと書面で出せ!どうして、辞めるんだ?」
「自分には、木が・・いや、前から気になってはいたのですが、この町は、浅田飴が降ってくるからです。」
「バカ!何が降ってもおかしくない世の中だ!もっと頑張れ。」
「嫌です。そもそも、無断で他人の家の壁を塗って何が楽しいのですか。」
「空き家対策だ。景観の美化という利益に適っている。」
「でも、後ろめたさや意に反する物事を、ぬるま湯で誤魔化しても、傷は癒えません。氷河期を信念で越えてこそ、希望の芽が出るのです!

「そうだな。きっと、その萌芽(ほうが)いい。」

 

P.S.
10年後、その家の庭には、南天の木が生い茂る。

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